2010年6月25日金曜日

諫早開門調査について

25日は有明海の諫早湾開門に関して、海洋学会としての意見をまとめるために、九州大学に行った。取りまとめは海洋学会環境問題委員会の産総研の鈴村さん、幹事として中央水研の中田さん、九州大学から柳さん、松野さん、佐賀大学から速水さん、濱田さん、長崎大学から梅澤さん、広島大学から山本さん、元中央水研の佐々木さん、そして名古屋大学水循環研究センターから石坂が集った。

当初、私が言い出したところもあったが、開門調査をしても前の状態にすぐに戻るわけではなく、何が言えるかかなり懐疑的ではあったのだが、皆さん建設的な意見をだしてくれたので助かった。学会レベルでは開門調査をするべきかという議論ではなく、開門をするとしたら、どのような調査をするべきかというところを科学的な観点でまとめるということで進んだ。今後メール等でやり取りをしながらあまりおそくならないうちにまとめることになる。


2010年6月24日木曜日

論文紹介

24日はPDのESさんが、P.I. MILLER, J.D. SHUTLER, G.F. MOORE and S.B. GROOMのSeaWiFS discrimination of harmful algal bloom evolution, Int. J. Remote Sensing. 27: 2287-230.を紹介した。特定種の赤潮とそれ以外の状態について、リモートセンシングデータの波長別の輝度などで、統計的に区別をするという手法で、先週紹介のあった光学的な理論と現場データに基づいた手法と対照的な方法である。現場データがあれば先週のような手法もよいが、現場データがなければ今回のような手法も効果的かもしれないが、もう一工夫ほしいところだ。


2010年6月17日木曜日

論文紹介

17日はM1のOT君が、CannizzaroaらのA novel technique for detection of the toxic dinoflagellate, Karenia brevis, in the Gulf of Mexico from remotely sensed ocean color data(海色リモートセンシングによるメキシコ湾の有毒渦鞭毛藻Karenia brevisの新しい識別法)を紹介した。メキシコ湾では以前からこの種による赤潮被害があり、研究が盛んである。多くの光学観測のまとめからこの種類の赤潮が起きているときには、他のときよりも散乱が小さいことを見つけ、それを衛星データに適用している。散乱が小さいことがどうしてなのかはあまりよくわからないが、しっかりした論文だ。われわれも有明海の赤潮で同様のことを試みようとしたが(Sasaki et al., 2008)、特定種の情報が充分集まらなかった。現在やろうとしてる大分でどこまでできるか。

2010年6月16日水曜日

勉強会、お客さん

16日は昼から教員会、その後MATLABの勉強会をした。MATLABはそれなりに便利そうで、今後研究室で勉強を続けていく予定だ。
また、KANSOの石田和さんが、名古屋支店の二人と一緒に訪ねてきた。石田さんとは工技院時代の海洋の炭素循環に関する研究(NOPACCS)の立ち上げ時からの仲でもう20年になる。なんと営業部長になったとのこと。海洋基本法で海底資源が注目される中ビジネスチャンスを狙って、東京を支店にしようとしているそうだ。外洋の調査について0から一緒に立ち上げて、ここまでなったのだから、ぜひさらに発展してほしい。一方でいろいろなモニタリングの仕事が、価格競争で継続性がなくなる上に、質が悪くなっていることは本当に問題である。談合は問題だが競争だけが本当によいわけではないのではないはずだ。その後、場所を変えて、名駅近くの「うな善」で。

2010年6月15日火曜日

海洋学ゼミ

海洋学ゼミで高等研究院の岩本洋子さんが、「飛沫から生成する海洋起源エアロゾルの雲凝結核特性」について発表してくれた。彼女は私の研究室での培養植物プランクトンをして、その濃度を変えて、エアロゾルの生成実験をやっている。バブリングがどの程度実際の海洋の海面の状況を表すのかなどよくわからない部分があったが、面白い内容であった。また普段来ない大気系の研究者がきてくれたのもよかった。

伊勢湾流域圏2070年

GCOEの一環で伊勢湾流域圏の2070年を考える討論をした。60年先にどうなっているのか考えるのは容易ではないが、様々な意見が出たが、個人的には「都市(人間)と田舎(自然)の共存と満足」「物質、エネルギー、食料、資源の独立性」「モニタリング-シミュレーション-政策」の3つにまとめてみた。訳のわからぬ将来を議論する暇があったら目の前の研究を進めたいという若手の意見もあったが、理想を描くことも今の世の中では重要だろう。両立させて行っていくことが望ましいのではないだろうか。

2010年6月12日土曜日

藤前干潟と長良川河口堰

6月12日はまたGCOE関係で藤前干潟と長良川河口堰の見学に行った。藤前干潟は周辺が埋め立てられた中に残った干潟にごみ埋め立て処分場の計画が発表され、市民運動のかいあって、諫早締め切り直後に計画が撤廃され、ラムサール登録もされたことで有名な場所だ。いってみるとまさに都会の真ん中に残された海のオアシス(?)で、NPOが運営する活動センターではボランティアによる見学会もおこなわれている。干潟にでると表面に珪藻の濃い色が目立ち、生産性はきわめて高い。シジミやヤマトシジミ、ソトオリガイなどが多かった。仕掛けてあったわなにはウナギも入っていた。漁業が成り立つほどではないことは残念だが、都会の海で自然海岸がなくなっていくのは仕方がなければ、このような共存のしかたもあるのかもしれない。また、浄化能力がどの程度なのかの、研究なども面白そうである。ただ川からの土砂の供給が減少して、今後も維持できるのか心配な面もある。
隣のゴミ焼却場へはゴミ収集車が頻繁にゴミを運ぶ。
表面の茶色は珪藻、穴は貝など

 この後は長良川河口堰へ。治水、利水、塩害防止のために建設された巨大河口堰で、魚道整備など環境面への配慮もされているが、伊勢湾の漁業に影響が出ている可能性についても聞いたことがある。本当にこれが必要なのか、他の方法がなかったのか、疑問は残る。さらに輪中の郷へ、昔からの中洲の変遷に関する説明には驚かされた。そこで水と共生して生きていた人々の生活が、伊勢湾台風を契機に大きく変わったとの説明だった。絶対に決壊しない堤防はない中で、最悪の場合考えて準備しておく必要があるとの言葉は重い。

何やら宇宙的な長良川河口堰

2010年6月11日金曜日

衣浦港


6月11日はGCOEの伊勢湾流域圏の授業の一環で伊勢湾衣浦港に。衣浦港廃棄物処分場の工事現場を海側から見学するとともに、海洋観測を見てもらった。先々週に岸から下見をした時とは打って変わって、赤潮状態だった。船を見て驚いたのは、観測船や漁船とは全く違い、ブルワーク(甲板の波よけ側壁)がないことだ。観測には向いていない(というよりやってはいけなかったのかもしれない)が、落ちないように透明度測定、採水をし、多項目水質計をおろしたが、プロペラのほうにいってしまう。引っかからないように場所を移動したところであぶなくブイにぶつかりそうに。船長さんもこんな作業は経験がないようで大変だった。とても学生にやらせるわけにいかず、何とか観測はこなしたが、一人で働いてしまった。港内とはいえ、やはり海はなめてはいけない。
赤潮の海と危険な作業場

処分場は広大な場所を排水がもれないように仕切った上で、これから十数年かけて処分し、さらにそれを工場敷地にしようとのこと。陸上で行き場のないゴミを使って海を埋め立てる工事だ。すでに人工海岸となっている場所の外側ではあるが、これでよいのだろうか。

広大な埋め立て処分場工事

2010年6月10日木曜日

ゼミ

10日は論文紹介ゼミ、YSがCC Chenら(2009)の「東シナ海のプランクトン群集呼吸への長江の影響」を紹介した。長江希釈水では基礎生産も群集呼吸も高いが、群集呼吸が基礎生産を上回るから、長江から流れ込んだ有機物が大切なのだろうということ。仮説ははっきりして、データもかなりあるが、観測が夏に限られているので、季節変化を考えなくてもよいのか疑問。また、もし基礎生産が純光合成量だとすると、群集呼吸に植物プランクトンを入れてもよいものか?

2010年6月8日火曜日

授業初め

6月8日朝から大気水圏環境の科学の授業。よい質問としては、「暖水塊や冷水塊はなくなったりするのか」「地衡流とエクマン輸送の関係」など。

2010年6月7日月曜日

東シナ海研究集会

研究集会「東シナ海の大気海洋相互作用と生物基礎生産」

2010年6月7日に地球水循環研究センター会議室において標記の研究集会を開催しました。この研究集会は、名古屋大学地球水循環研究センターと九州大学応用力学研究所とで共同で行なっている東シナ海の生物生産への長江希釈水の影響に関する研究の状況をまとめ、2010年7月に予定されている東シナ海航海の計画を策定する目的で行ないました。また、同海域で西海区水産研究所と国立環境研究所が行っている研究についても発表してもらいました。参加者は学外7名(うち九州大学4名、国立環境研究所2名、西海区水産研究所1名)、学内11名の18名でした。

 前半は、地球水循環研究センターで進めている衛星リモートセンシングによる沿岸環境の研究として、海面高度計による流動場の把握(森本)と海色による植物プランクトンの季節・経年変動の把握(山口)、九大応力研が行っている定置網による対馬海峡から日本海中部における低塩分水の把握(千手)と、国立環境研究所が行っている長江起源の赤潮の輸送に関する生物(越川)および物理(東)的な研究、西海区水産研究所が行っている甑島から長江河口のCK線での観測結果(長谷川)の紹介をしてもらいました。

 後半は、長崎大学の練習船長崎丸を利用した名古屋大・九大・富山大の共同調査の内容で、栄養塩と植物プランクトン色素(石坂)、クロロフィル極大の挙動(遠藤)、漂流ブイ観測と表層発散(松野)、海底乱流混合層と物質輸送(吉川)、海底湧水と大気からの栄養塩供給(張)の話題提供がありました。

夏季の東シナ海表層には、長江から流入した淡水起源の長江希釈水が存在し、この水の存在によって、表層に長江起源の栄養塩がなくなった後も、基礎生産を支えるのに充分な供給が行われる可能性があるのかどうか、様々な角度からの議論がありました。これをもとに、7月に予定されている主に韓国経済水域内で行う日中韓共同の観測について計画を策定しました。

7月の航海は、韓国、中国の人も交えて、韓国の経済水域内で観測を行う予定で、今回計画の大筋を決めた。しかし、まだ韓国からの正式な許可が下りていないのが心配である。

今回の懇親会は前日の晩に世界の山ちゃん栄店に有志でいった。

2010年6月5日土曜日

新総理

新総理が菅さんになった。民主党政権になり初めての理系の総理と複数の理系閣僚には期待していたのだが、スパコンは1位でなくてもよいのではないかとの発言に象徴される夢の仕分けと、バラ撒き政策はいささかがっかりさせられた。二人目の理系総理に新たな期待をしたい。

2010年6月4日金曜日

コーブ

コーブという日本のイルカ漁のドキュメンタリーがニュースになっている。海外出張の時の飛行機の中で見ることがあったが、漁協の反対を押しての撮影や水銀値の結果など、結構ショッキングな内容であった。しかし、今回それを上映しようとすることに対して、特定団体が反対するので、上映中止にしたとか。自由な日本でこのようなことがあることはもっとショッキングで残念だ。
そういえば今日、大分からの帰りの飛行機から伊勢湾で数匹のイルカが見えた。

今日は月曜日の研究集会の準備を行うが、まだまだデータを利用できる形に整理するので精一杯だ。

2010年6月3日木曜日

大分赤潮観測


6月2日から大分水試の赤潮観測に参加した。PDのESさんと一緒に夕方の便で大分に行き別府から乗船した。2日は主に別府湾で観測し、国東に入港した。われわれは海の色の測定と色素分析を行ない、宮村さんはプロジェクトで購入した連続顕微鏡フローカムを航走中動かした。表面水の連続採水装置のない船に、新たに採水パイプを設置、これは非常に優れものだ。幸いにしてKarenia mikimotoiと呼ばれる赤潮はまだ出ていないことが確認できた。水試の調査船、豊洋の乗組員は9名でみんなとても親切でアトホームな感じだが、仕事はテキパキとこなす。チョッサー(チーフオフィサー)は私が長崎大に行く直前に卒業した児玉さんだ。

3日は快晴で凪のこれまでないぐらい調査にもってこいの状況。ところが始めの測点が終わった時点で、エンジントラブルで調査中止との知らせ。ショックであるが安全第一なので仕方がない。帰る途中で表面採水と船上からの輝度測定を何点かで行う。水試前に入港し修理を待つが、結局明日も出港できそうもないとのことで、急遽帰ることに。観測は少なかったが、赤潮本番の来月、再来月の観測準備には十分だ。

航走しながらの海の色の測定

帰りは別府に一泊して温泉を楽しみかえる。ぶらりと入ったすし屋大和田はなかなかよい雰囲気。ジャズが流れていたが、最近の趣向だそうだ。関サバ、関アジはもちろんだが、国東でとれたという地ダコはやわらかく味があり、赤貝も甘くておいしかった。温泉も古い竹瓦温泉は明治にできて、現在の建物は昭和13年だそうだ。暑いお湯は本当にリラックスできる。朝は駅前高等温泉に。

海側から見た別府市

2010年6月1日火曜日

授業等


今日は朝から全学の大気水圏環境の研究で、大気と海流の話をした。質問を聞いてもなかなか出てこないが、書かせると「なぜ拡散があるのに海の塩分は均一にならないか」などいろいろと面白い質問が出てくる。午後は大学院の地球学Ⅰで、今回は主に自分の研究内容を中心に、気候変動と海洋生態系の話をした。こちらもなかなか良い質問が出る。

その後、赤潮調査のために大分県に飛んで、別府から乗船。やはり温泉。地元の河童の湯に。一緒に行ったインドネシア人のES君は温泉にははいらないとのこと。いつも家内がお風呂の後に言っている言葉が思い出される。「日本人でよかった」