2011年4月28日木曜日

受賞・論文ゼミ

4月28日は朝から吉報がまいこんだ。
以前、現在北大水産の山口篤さんが「平成23年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞」を「海洋表層から深層に及ぶプランクトン群集構造の研究」で受賞したそうだ。この研究は私が資環研にいる時にやった、WEST-COSMICというプロジェクトでとったデータが中心になっている。表層から深層の全体でのプランクトンの分類群と大きさ別の現存量を明らかにするという、地道な研究だ。山口さんはそのデータ取得から論文執筆までを頑張ってやってくれた。石田洋さんの論文賞に続いて喜ばしい。

午後は論文発表のゼミを行なった。発表者はXYJさん。論文は AttrillらのClimate-related Increases in Jellyfish Frequency Suggest a More Gelatinous Future for the North Sea, Limnol. Oceanogr., 52, 480-485. (北海の気候に関連したクラゲの増加はゼラチン質の未来を予想している)だ。
北海での50年以上にわたる連続プランクトン計測サンプルの解析データを、北大西洋振動と比較した結果、北大西洋振動指数がプラスの時にクラゲが増加しいた。また、pHの減少ともクラゲ量は相関を持っていた。これらの事実とモデルから、将来もっとクラゲが増加すると予測している論文だ。事実と将来予測という意味では面白い論文であるが、なぜ北大西洋振動指数やpHとクラゲに関連があるのかの説明はあまりない。北大西洋振動指数がプラスだと、西風が強くなり、暖水が北海に流れ込むのかもしれない。
この論文の強みは何といっても50年にわたるプランクトンのサンプルだ。日本でも気象庁などは世界に誇る長期データを取得してきたが、昨今の予算減少で長期データの維持がむずかしくなっている。原発問題の影響でも、有明海でも東シナ海でも同じだが、何か起こってからではなく、普段からの自然の姿をしっかりと記録しておくことが大切なのだが。

2011年4月27日水曜日

かんちゃん

東海大の千賀さんと東大海洋研の植松さんが以前開発した、無人の観測艇「かんちゃん」が放射線調査に利用されるようだ。
開発当時は漁具にひっかかったり、いろいろ規制があったりで利用は難しかったようだが、今回はうってつけだろう。報道では、原発内のではアメリカ製のロボットばかりが活躍しているようで、海では国産が頑張ってほしい。

2011年4月26日火曜日

大型クラゲ委員会

4月26日は大型クラゲに関する国際共同調査の委員会があった。研究を担当している水研センター、広島大学、山形大学、水産大学校、名古屋大学、それぞれの今年度計画を発表。昨年につづき中国に頼んで調査が出来るのは画期的だが、日本人は乗船できず、クラゲ以外の環境調査もできないというのは中国らしい。
幸いにして昨年は大発生しなかったが、今年度はどうか。衛星で表面水温を見る限り、3月までのところ非常に黄海・東シナ海の水温が低い。2008年・2010年と最近発生していない年は特に5月・6月の表面水温が低い傾向にあった。今後、水温が上昇しないとはいえないが、冬の水温が低ければ、深い場所の水温も低いので発生しにくと個人的には考えている。実際には6月の調査結果を見る必要がある。
皆、震災直後の東北太平洋岸まで被害が及ぶような大発生がないことを望む。
今晩は、教員での熊谷新准教授の歓迎会があったが残念ながら間に合わない。

2011年4月25日月曜日

輪読ゼミ

25日はミーティングのあと、輪読ゼミだった。今年度は日本語訳もあるポールピネの海洋学にした。原則的には英語で読んで、スライドも英語、発表自体は日本人は日本語でやるが、今回は留学生のST君が英語で発表した。
今年度は海洋学を初めて学ぶ人も多いので、よい教科書だ。個人的にはアメリカの大学院で一通り習ったし、授業で海洋学全般を教えていたので、だいたいの内容はわかっているつもりだが、日本の教員で海洋学全体を読んでいる人は少ない。私が欠席した先週の第1回目は歴史、第2回目の今回は地形に関してで、水系の研究者には意外と聞きなれない内容かもしれない。
アメリカの海洋学の教科書では、基本的にどの教科書も同じ内容が扱われていて、いかに海洋学が学問的に確立されているかがわかる。日本の先生が書くとこうはならないだろう。

2011年4月22日金曜日

第1回ゼミ

22日は、研究室のゼミの新学期第1回目。今回は博士で来たHM君の修士論文に関しての発表だ。大気経由の鉄の供給によって、地球規模の植物プランクトンの分布にどう差が出るかを数値モデルから研究した。モデル的に考えた鉄の要求パラメータによって、意外に分布自体には変化が無く、全体の濃度が変化した。基本的な分布はやはり窒素やリンなどの基本的な栄養塩で決まっているようだ。鉄を他の栄養塩と同じようにあつかう、比較的単純なモデルで他のモデルでも利用されているようだが、鉄もこれで本当によいのかはやや疑問を感じる。
その後、HyARCでの新入生歓迎会だった。今回は大分新入生が多かった。海洋系だけでも4名だ。また准教授も新任で森林の熊谷さんが入られた。ただ風邪気味だったので、早めに退散した。

2011年4月19日火曜日

CREAMS-AP会議

4月18日は中国杭州の第2海洋研究所でPICESのCREAMS-AP(北東アジアの循環研究アドバイザーパネル)の会議に出席した。韓国ソウル大のKR Kim、ロシア太平洋海洋学研究所(POI)のV Lobanovと共同議長をしているこの会議は、毎年秋のPICES年次総会で1回の他に1回集っている。今回は共同議長の3名以外に韓国海洋研究院(KORDI)からJH Lee、中国科学院海洋研究所(IOCAS)からY Fei、中国海洋局第2海洋研究所(SIO/SOA)からD Xuの6名が集った。出席を予定していた東大大気海洋研の蒲生さんは、急遽原発関連の航海に行くことになったので欠席した。
各国での最近の活動報告の他、日本海のプロジェクトEAST-I、黄海東シナ海のEAST-IIの今後の活動について議論を行なった。今後発展させなければならないEAST-IIだが、来年名古屋で行なわれるPEACEにあわせて、ワークショップを行なうことになった。また呼称問題も関連して今年発行されたPICESの現状報告書に入れられなかった日本海の報告書の執筆に関しても別に組織を作って進めていくこととなった。私は長崎丸での観測のことやその結果、海色の新しい時系列データ、NOWPAPのリモートセンシングトレーニングのことなどを紹介した。
韓国ではEAST-Iに関連したプロジェクトが5年間で終わり、さらに継続して5年間のプロジェクトが走りそうである。これでまた日本海をEast Seaと読んだ論文がどんどん増えるのは日本としては困ったものだ。韓国も中国も、ロシアもかなり国策で海洋研究を行なっているのだが、日本は縁辺海の研究はもともと多いとはいえない。さらに、震災と原発問題で今後の研究費に関しては不安が大きい。
右からLobanov, Fei, Kim, Lee, Ishizaka, Xu
杭州は2002年にSPIEで一度行っていたが、中国の十年の違いは大きい。田舎の印象だったが、今は大都会となっていた。5年間で家の値段が3倍になったというから驚きだ。近くの龍井(ロンジン)はお茶の産地でここまで行けば少しのんびりしている。お茶屋が並び、お茶葉を入れたコップに直接お湯を入れるお茶を何杯も飲んだ。
龍井のお茶畑
ロンジンでお茶を
杭州には飛行場もあるが、今回は上海浦東空港から上海虹橋空港まで行ってそこから、新幹線(和階号)で。上海の東西横断で1時間、新幹線も1時間の道のりだ。和階号は快適だが、日本の新幹線にそっくりで、かなり技術が移転しているようだ。切符は自動販売機で簡単に購入できた。上海-杭州の行きは直行バス、帰りは地下鉄に乗った。どちらも簡単だったが、地下鉄は混んでいる上にたくさん駅がある。100円程度と安いが、人を見るには面白いが、バスのほうが楽だ。
上海と杭州を1時間(約2000円)で結ぶ和階号

2011年4月15日金曜日

D論発表会、新歓

4月14日はYH君のD論発表会があった。このところ連日の練習で、特にPDのSCさんがしっかりと指導してくれたこともあって発表は無事終わった。夜は新歓もかねて、池下の世界の山ちゃんへ。

2011年4月13日水曜日

会議・GCOE説明会

4月12・13日は代理出席を頼まれた会議3つに出席した。一つは普段も出席することのある大気水圏系の会議だったが、二つはこれまで出席したことのない、本部と連合2群と呼ばれる理系のセンター群の会議だ。長崎大学時代ではよくこのような会議にも出席していたが、この2年間は新任ということもあって、あまり出席することは無かったが、今後出席する機会も増えるだろう。今回の2つの会議に関しては、思ったよりは効率的に短時間で終わったように思えた。
12日はGCOEの全体説明会と伊勢湾の集会があった。今年は7月の長崎丸の航海をGCOEのORTの一環として位置づけようと思っているため、参加希望者が出てくることを望んでいたが、二人ほど興味を示してくれた。また、今年からはいったHM君が伊勢湾ORTに興味を示している。

2011年4月11日月曜日

シンガポール大学からのお客さん

4月11日は以前この研究室にいてシンガポール大学にいるSandricさんが訪ねて来てくれた。シンガポールとマレーシアの間でおこる有害藻類ブルームのプロジェクトを持っているそうだ。面白いのは、普通の観測だけではなく、無人のヘリ、カヤック、潜水艇など、技術的には日本でもやれそうだがあまり例を見ないロボット観測を実際にやっているとの話だった。ぜひ協力したいとの話をした。夜は関連の強い人たちと一緒に東山公園のより道に。

2011年4月6日水曜日

原発汚水

 原発の汚染水の海への流出を止めたという報道がある。しかし、素朴な疑問であるが、低いところで水の流出を止めるとどうなるか、もしも冷却プールへの放水が流れ出ているとすれば、下に向かってそれなりの圧力がかかっているはずである。海への流出を止めれば当然、それよりも上、可能性としては陸であふれる可能性が出てくるのではないか。素朴な疑問である。冷却水を注入しているのであれば、当然それに対応する水を抜き取らなければいけない。タンカーなど外にためるか、早く循環冷却システムを作らなければならない。
 実は某原発の外の海での放射能の移動に関する委員会に出席していたことがある。海の粒子へ吸着した放射性物質の沈降に関するシミュレーションを行なう予定であった。しかし、実際にはほとんど研究費も無く、研究には程遠かった。これほどの事態までは想定できなかったとしても、問題が無かったあのような時にしっかりとした研究をせずに、今回のような非常時に対応はできないはずだ。有明海などの問題でも同じだ。普段からしっかりした状況把握に勤めることが必要なのではないか。スケジュールが会わないが、学術会議の海洋関連(SCOR)の分科会と海洋学会でも今回の海洋汚染について議論を始めるようである。
 この騒ぎで中国からの留学生が、多くの人にお世話になって入学が決まったのに、残念ながら日本に来るのをあきらめてしまった。中国での報道にも問題があるかもしれないが、日本の安全神話が崩れている。

2011年4月5日火曜日

放射能による海洋汚染

 福島原発での海洋汚染の報道が多くなっている。高濃度の汚染水流入が止まらず、また低濃度の汚染水は海に流すことになった。海洋生物の汚染も心配される中、コウナゴで高い濃度が検出されたようだ。コウナゴは植物プランクトンや動物プランクトンなど比較的低次の栄養段階にあるので、影響が早いのだろう。生物濃縮はないという報道もあるが、おそらく放射性物質の生物濃縮に関して、これまで研究例はほとんど無いのではないだろうか。半減期の短いヨウ素はともかく、もっと長い元素がどうなるのかは調べていく必要がある。
 汚染水はすぐ拡散するからという報道も多いが、水は普通の人が思うほど混ざりやすくはない。高濃度の汚染水がどのように移動しているかは調べる必要がある。茨城のコウナゴということで、福島から流れ出した汚染水は南化していることもありうるだろう。茨城沖の海水が東京湾に流入している可能性は以前から指摘されており、時空間的に密なモニタリングが必要である。

2011年4月1日金曜日

新入生

研究室に新たに二人が入ってきた。一人は東海大学から来たHM君。以前資環研の上司だった中田喜三郎さんの研究室で修士をとって、こちらでは博士課程で、伊勢湾の研究を予定している。もう一人は山口東京理科大から来たKT君。来年から修士に入ることを目指してしばらくは研究補助員扱いになる。
他にGCOE優待生として中国人のWPさんが来る予定なのだが、入国許可書の遅れに、さらに福島原発の危機感で来ることを悩んでいる。すでにこちらにいるXYJ君も家族が心配しているので、一時帰国する予定だ。海外、特に中国ではかなり危機感をあおった報道になっているようで困ったところもある。放射能は見えない上に、報道で出てくる単位が日常では理解しにくいために、恐怖心が煽られる。国内であっても、もっとわかりやすい報道が期待されるところだ。