1月12日は3名目HY君の博士予備審査だった。副査は中塚先生と森本先生だ。彼の論文は、衛星で測定した黄海・東シナ海のクロロフィルの、季節変動や経年変動を記述したものだ。この海域の衛星データは、濁りの影響でNASAの標準で利用されている値が合わないことが知られている。そこで研究の前半では標準のクロロフィルに関して、濁りの指標といわれる明るさの値と比較し、値が合わない可能性のあるのが中国・韓国の沿岸域の特に冬場であることを確かめた。その上で海域分けを行い、季節変動を調べた。その結果、黄海中央部や東シナ海の広い範囲で春季ブルームが見られた。さらに長江河口域から対馬周辺までの間で、6-9月に西ほど遅いクロロフィルの季節的な極大が見られ、これは長江の流量の極大に対応した。つまり長江の影響が対馬まで見られることが示された。研究後半では、中国・韓国・日本の研究者の現場データで、より精度のよいクロロフィルと懸濁物重量の衛星データを作り、その特性を調べている。濁りが高い海域ではクロロフィルが低いこと、濁りの減少した後に春季ブルームが起こる海域があることなどが明らかとなっている。長江起源と考えられるクロロフィルの高い水が対馬まで続いているのは、長江や東シナ海の環境の変化が日本海など日本周辺に及んでいることを示している。実際にわれわれ研究室でも研究をやっているエチゼンクラゲなどは黄海や東シナ海北部から流れてきているようだ。また濁りと春季ブルームの関係なども面白い。
博士を3名一度に修了するのはこちらも大変だし、なかなか厳しい。