2011年1月11日火曜日

博士予備審査2

今日はTS君の予備審査だ。副査は田上先生と三野君、そして九大応力研の松野さんにお願いした。今日は残念ながら松野さんは来れなかった。TS君は特に植物プランクトンの光の変動への適応に興味を持っている。潮汐や風によって水が混ざることによって、植物プランクトンが明るい表層と暗い下層を運ばれることによって、どう応答するのかを調べた。有明海をフィールドに選び、長崎大学の練習船「鶴洋丸」にのって水を取って分析した。
初めの研究では大潮小潮での光の条件と植物の色素の違いを調べたところ、大潮に濁って水中の光が減少し、それに伴って強い光を防ぐ色素が減少して、逆に光を吸収する色素が増加していた。つまり、大潮小潮の違いで起こる濁りの違いによる光条件の違いに、植物プランクトンが反応していることが明らかとなった。この仕事は日本海洋学会のJournal of Oceanographyという雑誌に掲載されている。
後半の研究では、九大の松野さんたちがやっているターボマップと呼ばれる水の混ざり方を調べる機械のデータを使い、植物プランクトンが光の有る層をどの程度の時間で行き来しているかを調べた。ちょうど8日に話題がでた山崎さんの作った機械だ。その結果、強い風が吹くことによって、水の混ざり方がとても早くなって、植物が明るい条件と暗い条件を数時間で経験することがわかった。さらに、そのような時には、植物プランクトンが明るい条件にも暗い条件にも適応することが出来ずに、光合成の活性までも減ってしまうことが明らかとなった。風などによって水が混ざることが植物プランクトンや基礎生産に大きな影響を与えることがわかった。こちらもこれから学術誌に投稿することになる。
あれだけ濁った海域でも植物プランクトンにとって光が強すぎる状態になりうることは驚きだ。これが有明海の環境変化とどのようにつながるかはよくわからないが、有明海だけではなく、どんな海域での基礎生産の変動機構を考える上でも非常に重要な仕事になると思う。