以前、現在北大水産の山口篤さんが「平成23年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞」を「海洋表層から深層に及ぶプランクトン群集構造の研究」で受賞したそうだ。この研究は私が資環研にいる時にやった、WEST-COSMICというプロジェクトでとったデータが中心になっている。表層から深層の全体でのプランクトンの分類群と大きさ別の現存量を明らかにするという、地道な研究だ。山口さんはそのデータ取得から論文執筆までを頑張ってやってくれた。石田洋さんの論文賞に続いて喜ばしい。
午後は論文発表のゼミを行なった。発表者はXYJさん。論文は AttrillらのClimate-related Increases in Jellyfish Frequency Suggest a More Gelatinous Future for the North Sea, Limnol. Oceanogr., 52, 480-485. (北海の気候に関連したクラゲの増加はゼラチン質の未来を予想している)だ。
北海での50年以上にわたる連続プランクトン計測サンプルの解析データを、北大西洋振動と比較した結果、北大西洋振動指数がプラスの時にクラゲが増加しいた。また、pHの減少ともクラゲ量は相関を持っていた。これらの事実とモデルから、将来もっとクラゲが増加すると予測している論文だ。事実と将来予測という意味では面白い論文であるが、なぜ北大西洋振動指数やpHとクラゲに関連があるのかの説明はあまりない。北大西洋振動指数がプラスだと、西風が強くなり、暖水が北海に流れ込むのかもしれない。
この論文の強みは何といっても50年にわたるプランクトンのサンプルだ。日本でも気象庁などは世界に誇る長期データを取得してきたが、昨今の予算減少で長期データの維持がむずかしくなっている。原発問題の影響でも、有明海でも東シナ海でも同じだが、何か起こってからではなく、普段からの自然の姿をしっかりと記録しておくことが大切なのだが。