2010年3月3日水曜日

黄海大生態系プロジェクト(YSLME)


 2月24-26日に中国アモイで開催されたYSLME(黄海大生態系プロジェクト)の第2回科学会議に出席しました。LME(Large Marine Ecosystem)はアメリカ海洋気象省(NOAA)が海域の生態系保全のために提案した概念で、世界の大陸棚域を64海域に分けており、黄海をはじめいくつかの海域はUNDP/GEF (国連開発計画地球環境ファシリティ)からお金がでて生態系保全の研究が進められています。今回のYSLMEの会合は、韓国(韓国海洋研究院)と中国(国家第1海洋研究所)に、最近北朝鮮も参加して行なわれた5年間のプロジェクトの締めくくりで、これまで行なわれてきた研究成果をまとめ、次の継続プロジェクトを提案するための議論をする趣旨でした。

内容的には黄海全体の物理・生物・化学・漁業環境から、沿岸の干潟の管理や政策提案まで幅広く、特に興味深かったこととしては、中国と韓国が黄海中央部で共同観測行ったことや、大きな国際共同プロジェクトの中にミニプロジェクトと呼ばれる個人提案の小さなプロジェクトが多く取り上げられていたことがあります。私はリモートセンシングを利用して、この10年間の黄海のクロロフィル量は東シナ海で見られる長江の影響ははっきりせず、増加傾向があり富栄養化の影響と考えられること、YSLMEのサポートで日中韓の研究者が共同データベースを作成し、衛星データの検証と新しい手法開発をしていることを紹介しました。またNPECの寺内さんが共著で衛星データを用いて広い範囲での富栄養化の判定を行なう手法について話をしました。

日本のエチゼンクラゲに関しては中国側はまだ黄海・東シナ海で発生していることを認めたくないようでしたが、全体的に韓国と中国の研究者はうまく協力を進めているようで、さらに北朝鮮も含めて黄海の環境保全のためのコミッションを策定するような動きが進んでいるようでした。黄海周辺ではそれぞれが同じような立場でいることが幸いしているのかもしれません。東シナ海の問題となると上流・下流がはっきりしたり、領土問題や台湾の問題などもでてくるので厄介ですが、ぜひ東シナ海でもこのようなプロジェクトがあると良いと感じました。

最終日は誕生日で、おどろいたことにホテルからの差し入れがありました。