2011年11月30日水曜日

GCOE伊勢湾流域圏持続性とは何か

30日はGCOEの伊勢湾流域圏懇談会で持続性とは何かを議論した。まず出席者が事前に考えた数行の意見を配布して、順番に説明しながら議論を進めた。以下は、その議論を私なりにまとめ文である。
議論の前でのコメントでは、あえて専門の自然科学的な視点を離れて、高度成長期の終焉と人口減少が始まった日本での持続性について、日常の社会から少し考えてみた。その結果、世界経済や地球環境、災害など様々な変動・変化の中で、経済、人口を安定化し、よい環境を保ち、心の安定を求めることが大切ではないかとまとめた。談話会での議論の中では、様々な社会学的、自然科学的なキーワードが並んだ。そこでここでは、すでに社会学ではやりつくされているのかもしれないが、あえてこれらを生態学と社会学のアナロジーの観点でまとめてみた。
生態学の基本的な概念は、「個体」とその集合である「個体群」が、別の種の個体群と共存した「群集」として、「非生物環境」を含めた「生態系」の中で「食物連鎖」による「物質」と「エネルギー」の流れの中で生きている様を記述することである。「個体」は当然生きようと必死であり、「個体群」は遺伝子を残そうとする。進化した「群集」および「生態系」は、「変動・変化」する環境の中で、構成する「個体」と「個体群」を何とか「持続」するように機能していると考えられる。産業革命前の化石燃料による膨大なエネルギーを手に入れる前の「人間」も、おそらくこの中に適応して生存しており、それが「里山・里海」の概念であると思われる。
 一方で、人間の場合は「個人」から「家族・友達」、その集団である「社会」があり、「エネルギー」や「物質」を「食物連鎖」だけのためではなく、自らの「心」を満たすために動かし、さまざまの「製品」や「構造物」を作り、同時に「経済」活動として「お金」を動かし、「情報」のやり取りでお互いの「絆」を作る。この一連の流れは「生態系」内での「エネルギー」と「物質」の流れと同じようではあるが、「心」が入るためにより複雑になっている。しかしこのシステムが、内的・外的な様々な「変動・変化」の中で「持続」されるとすれば、それは基本的には「生態系」の中で「個体」や「個体群」が「持続」されるように、その構成要素である「個人」と「家族・友達」を「持続」させようとすることがその原動力になるのではないか。
つまり、多くの人の「心の安定」が持続されて、「そこに住みたい」という気持ちをどう実現するか。これが「社会」を「持続」させるカギとなるはずである。このことはいまさら言うまでもないことなのかもしれないが、問題はそれをどのように実現するかである。「多様」な「物質・エネルギー・お金・情報」の流れは、「多様」な「空間スケール」で関連しあい、「多様」な「時間スケール」で「変動・変化」している。この内的・外的な環境の「変動・変化」の中で、「多様」な人間の「心を安定化」させるような、「修復力・再生力・転化力」のある「社会」をいかに作り上げていくかが、重要であることは今回の議論の中ではっきりしてきたように思う。この「心の安定性」のためには、「衣食住」「お金」「健康」「絆」などが、適量に安定的に確保されることが必要である。少なくともある分野では、そのためにしっかりとした「将来予測」を可能とし、その「予測」によってごく一部の人の「お金」が増えるではなく、より多くの人の「心の安定性」を保ちながら「将来のために楽しく我慢」するようにすることが必要となるのかもしれない。そんなことをこの議論から考えた。