2010年2月20日土曜日

SAFARIとChloroGIN(インド)


インドのコーチンで2月15-17日までSAFARI(リモートセンシング画像を利用した水産と養殖での社会利益)、18-19日にはChloroGIN(クロロフィルに関する地球統合ネットワーク)の二つの会議に参加した。どちらも現在イギリスのPlymouth海洋研究所のTrevor Platt博士とShuba Sathyendranath博士夫妻が、GEO(地球観測に関する政府間作業部会の一貫として数年前に始めたプロジェクトである。

SAFARIは衛星データを水産のために利用する活動で、今回初めての国際シンポジウムであった。衛星データを漁業、資源管理、養殖などに利用した、世界各国での例が発表された。アメリカ・ヨーロッパはもちろん、南アメリカ、特に地元インドの発表が多く紹介され、近年の急激な進歩には驚かされた。私は今年度から開始した海色データの養殖での赤潮被害削減に関する試みを紹介した。日本からはほかに、北大水産の斎藤誠一博士と元水産研究所の松村皐月博士が発表をおこなった。各国の国策といえる動きを聞いていると、日本の現在の体制の貧弱さを強く感じた。日本も海洋基本法を受け、海洋利用・管理についてもっと国策として進めることが絶対に必要である。

ChloroGINは、沿岸でのクロロフィルaを中心とした海色衛星データと現場データを、特に発展途上国に参加してもらって収集、利用していこうというプロジェクトである。すでにヨーロッパ、アフリカ、南米、インド洋で動いており、私は主に東アジアでの参加を促進させる立場で参加した。こちらも各国あるいはEUを中心として、どんどん動いているのに対して、衛星計画が2回失敗した日本はやや遅れ気味である。ただNPECで進めているNOWPAP/CEARACの活動はかなり興味をもたれ、正式にChloroGINに参加することとなった。東南アジアではこれまで動きがなかったが、今回東南アジアから参加した何人かも日本とのつながりが深く、日本が中心となってまとめていくことが強く望まれ、私としても動いていくことになる。

5日間、朝から晩まで和やかながら忙しいスケジュールであったが、朝昼晩と始めての本場のインド料理をしっかりと堪能した。また映画でも有名なインド人のダンス好きも改めて感じさせられた。町中では車はややうるさいが、みんな人が良さそうであった。シンガポールから直行便があるのも楽だ。名古屋コーチンのもとはこの町の名前と聞いたが、確認はできなかった。でも周辺の鶏は名古屋コーチンと良く似ていたと松村さん談。

会議の後、以前から知っていたインド人の研究者の家に呼ばれたが、非常に広いのに驚き、さらに彼が現在のポストをやめて、マレーシアに単身赴任すると聞かされ、また驚いた。会議を主催した二人もいろいろな国で活躍してきた大物だが、日本人も日本にとどまらないで世界で活躍するような人材を育てていく必要がある。

ソーシャルイベントでの地元料理(右手だけで食べます)

2010年2月8日月曜日

東シナ海ワークショップ

2月7・8日は長崎大学の松岡先生と九州大学の松野先生が続けてやっていた東シナ海関連の2本の振興調整費の最終国際ワークショップが福岡であった。前者は平成18年度から昨年度までの有害藻類ブルーム(HAB)に関する研究、後者は平成19年度から今年度までの物理環境と栄養塩に関する研究であるが、石坂も両方に参加して海色衛星データによって東シナ海の赤潮と植物プランクトンの色素クロロフィルの変動を研究した。今回は日本の他、韓国、中国、台湾、ベトナムの研究者が様々な講演があり、石坂も学生のYH君とMT君の結果を中心に衛星で観測した長江プルーム中のクロロフィルの変化について話をした。東シナ海での海水の循環とそこに含まれる栄養塩の挙動に関してはかなり複雑な課程であるが、最終的な討論では、おぼろげながら全体像が見えてきたように思えた。今後、さらに国際的な協力関係を継続していくことで合意した。

あまりに出張が続き、出るときに家内に次はいつ来るのと言われてショック。でもまだ年度内にインド・中国・韓国・東京と続く。

2010年2月5日金曜日

JAXA-水研報告会

2月5日はJAXAと水研の共同研究の報告会で再び東京であった。これで今年の一連の水産研究所関連の会議は最後である。この報告会は日本がみどり1号(ADEOS)ではじめての海色衛星をあげることになってから15年ほど続いている。みどり1号と2号(ADEOS-II)と失敗が続き、ようやく次のGCOM-Cプロジェクトが動き始め、水産研究者には少しずつ期待が高まっているようだ。特にGCOM-CのSGLIは250m解像度ということで沿岸利用の期待が強い。私も赤潮を抽出するPIとなっており、それをどう実利用につなげるかの話をした。若手が出てきていることは別の意味でも期待される。

大型クラゲ報告会

2月3日は再び横浜で大型クラゲの報告会があった。今度はこちらが研究成果を発表する立場での参加である。2008年はほとんど出なかったものの、2009年には今まででも出現が多い状態であったが、日本海での移動のコンピュータシミュレーションなどは随分とうまく表現できていることに驚いた。私の発表は1997年からの衛星データによって、エチゼンクラゲの発生が顕著になった2003年ぐらいから黄海の植物プランクトン量(クロロフィル)が多くなっており富栄養化の可能性があることと、発生が少なかった2008年はクラゲがポリプから離れる5・6月の水温が最近ではもっとも低くかったことについて中心に話をした。来年は中国海域での調査を申請するようで、申請が通ることを願う。

2010年2月2日火曜日

修士論文発表会

2月1日・2日は修論発表会だった。20分の発表と10分の質問で、長崎大学生産科学研究科では12分+3分だったから、随分と長く感じる。そのため質疑の内容はかなり濃く、学生にはきついかもしれないが、よい経験のはずである。今年は名古屋大学で修士を取る学生はいないが、今後こちらとしても、今まで以上にしっかりとした教育をしなければならないと感じた。ちなみに先に長崎大学で一人修士の発表をさせたが、現在の指導教員によれば、しっかりとこなしたようである。秋に一度、学会発表をさせたのが良かったのだろう。

久しぶりに大学にいたら、秘書のWAさんにジプシーのようですねと呼ばれてしまった。この年度末は外周りのいろいろなことを入れすぎた。

2010年2月1日月曜日

生物大発生

1月27-29日は水産総合研究センターの生物大発生についてのプロジェクトの推進会議と運営委員会があり、運営委員の立場で出席した。このプロジェクトは「クラゲ類の大発生予測・制御技術の開発」と「魚種交代の予測・利用技術」の二つのプロジェクトからなり、それぞれ広島大学の上真一先生と東北水研の斎藤宏明さんがプロジェクトリーダーをつとめ、これで3年目が過ぎた。毎回このプロジェクトの進行には驚かされる。クラゲの発生や魚種交代はいずれも古くから知られていた疑問ではあるが、これまであまり研究がすすんでいなかったが、ここへ来て急激に理解が進んでいる。特に魚種交代に関しては、海洋物理学からプランクトン、そして魚まで一貫した理解が進みつつあり、またコンピューターモデルによる予測も可能になりつつあるのは驚きである。そしてそれを産業に結び付けるまでの視点で多くの研究者が一丸となって研究を進めていることはすばらしいことである。クラゲに関しても、私も一研究者として参加し、来週委員会のあるエチゼンクラゲの国際共同研究とあわせ、随分と理解が進みつつある。

帰りは新幹線の事故でさらに1泊することになってしまった。提出締め切りのエチゼンクラゲの報告書を書きながら帰ることになった。