2012年6月8・9日に地球水循環研究センター会議室において
「東シナ海陸棚域の鉛直過程と物質循環」 という研究集会を開催しました。名古屋大学地球水循環研究センターと九州大学応用力学研究所とで共同で行なっている東シナ海の生物生産への長江希釈水の影響に関する研究の状況をまとめ、2012年7月に予定されている東シナ海航海の計画を策定する目的で行ないました。また、周辺海域に関する研究についても発表してもらいました。参加者は学外10名(うち九州大学5名、長崎大学2名、富山大学2名、西海区水産研究所1名)、学内14名の24名でした。
まずこれまでの地球水循環研究センターと九州大学応用力学研究所の関連した研究集会や航海、関連の国際的な動きなどのまとめの発表(石坂・松野)がされました。そして、前半として、日本海の低塩分水とエチゼンクラゲの関係(千手)、東シナ海の亜表層クロロフィル極大への成層や光環境の影響(松野)、亜表層クロロフィル極大の下の海底乱流混合層(遠藤)、乱流混合層と生態系モデルを利用した日本海前線でのクロロフィル極大(吉川)など、生物と関連した物理環境に関しての話題提供がありました。
後半は、亜表層クロロフィル極大の厚み(張)、東部東シナ海表層における一次生産の季節変化(長谷川)、有機・無機の溶存態・懸濁リンの分布(山口)、亜表層の栄養塩分布(武田)、粒子状有機物の沈降過程への長江希釈水の影響(鋤柄)、衛星観測にむけた植物プランクトン群集の把握(石坂)など、生物・化学的な話題提供がありました。
これらから、これまで蓄積したデータを再解析することの重要さが再認識され、特に亜表層クロロフィル極大の大きさや厚さ、水柱の植物プランクトン群集、栄養塩、沈降フラックスなどの相互関係について、長江希釈水の有無や光環境を含めた物理環境とともに、その時間的・空間的な変動に着目してより詳細に解析する必要性が明らかとなりました。
これをもとに、7月に予定されている対馬沖の長崎大学練習船による航海と、9月から10月にかけて黒潮域から韓国経済水域内で行うJAMSTECの淡青丸の観測について計画を策定しました。